成約インタビュー

「想い」を承継し、次世代の旅館へ

旅館業×個人 「想い」を承継し、次世代の旅館へ

奈川地区の賑わいを消したくないという想いからM&Aを選択した

-創業したきっかけをお聞かせください

亘様:奈川地区の観光資源を活かし、地域の活性化に貢献したいと思ったからです。

元々は東京の出身ですが、自然豊かな場所で子育てをしたいと思い、30年ほど前に長野県奈川地区に移住しました。長野県は小学生の時に父親に連れられてよく足を運んでいたので身近な土地でしたし、自分は山や川釣り等のアウトドアが好きでしたので、抵抗はありませんでした。当時は正社員募集が少なかったため、職探しは少し苦労をしましたが、奈川地区の振興公社に入社することになったのが、奈川地区へのIターン移住の決め手となりました。配属先は宿泊施設となり、半年後には施設長に就任、以降13年程施設長を務めました。

施設運営にも慣れ、自身での独立を検討していたタイミングで、市が所有する旅館(現在の「山荘わたり」)が閉鎖中であることを知りました。野麦峠スキー場に向かう途中に立地しており、旅館の閉鎖は観光面からみてマイナスの面が大きいと感じました。当時、私は奈川産品の商品開発にも取り組んでおり、商品化をするためにちょうど法人を設立していたのですが、賃借条件が法人限定ということもあり、条件を満たしていたため、市と交渉をし、賃借契約を締結、旅館業を開始しました。

―創業当初一番苦労したのはどういった点でしょうか?

亘様:集客ですね。創業したタイミングは旅館が閉鎖されて半年程度でしたので、問い合わせは多く、また、上高地や乗鞍高原にアクセス可能な旅館の中ではリーズナブルな価格でしたので(1泊2食付きで8,000円程度)、全く集まらなかったわけではないのですが、やはり苦労しましたね。自身の料理人の経験を活かして、地元食材を使った郷土料理を提供したり、旅館のトイレやレストランのリノベーションを行うことで、お客様の満足度を上げることに注力しました。結果としてリピーターが増え、集客が安定しました。

また、メインの宿泊者層も変わりましたね。当時は宿泊料金が安かったことから主要な客層は20代~30代の若者でしたが、徐々に中高年のご夫婦、家族連れにシフトしていきました。

―旅館を経営するにあたり、大切にしてきたことを教えていただけますでしょうか?

亘様:お客様に「のんびり、静かに、気兼ねなく、飾らない」空間を提供できるよう努めていました。料理は地元食材を使い、長野県を感じてもらえるような郷土料理を作り、敢えて各部屋にテレビを置かず、ゆったりとした空間を作っていました。

また、創業当時は建物の古さを活かして、何か懐かしい雰囲気を感じられ、喧騒を離れてほっと一息つける場所をイメージして運営していました。

―今回、M&Aを検討した経緯をお聞かせいただけますでしょうか?

亘様:元々、奈川地区の観光資源を活用しながら地域をより活性化させたい想いで創業をしましたが、結局後継者がいなければ、旅館を閉鎖せねばならず、奈川地区の賑わいが無くなってしまうという危機感を抱いたからです。地域観光に寄与してくれる方、地域の活性化につながるような事業構想をお持ちの方がいれば事業を承継したいと思い、M&Aを検討しました。

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―宋様にお伺いします。M&Aを活用しての承継開業を検討されたきっかけは何でしょうか?

宋様:亘様と似ているのですが、私もアウトドアが大好きでして、サラリーマン時代は毎週末アウトドアを楽しんでいました。ですので、開業するのであればアウトドア関連の事業を手掛けたいと思っていました。ただし、新規開業は初期投資の負担が重いことから承継開業を検討していました。

―最終的にM&Aをご決断された理由は何だったのでしょうか?

宋様:ポテンシャルが非常に高い旅館だと思ったからです。

山荘わたりの周囲には多くのレジャー施設があります(グラウンド、体育館、テニスコート、釣り堀等)。また、周辺観光地へのアクセスが良く(上高地、乗鞍高原、松本市街地等)、温泉もあるため、多くの海外旅行者に来ていただけると考えています。また、所有者が市という安心感や、賃借物件であるため初期投資を抑えられるという点も魅力的でした。

M&Aにおいては、当然マイナス面があるのは承知していますが、山荘わたりにおいては、先程述べたように自身が考えるプラスの面が多かったため、最終的にM&Aを決断しました。

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―無事にM&Aの成約を迎えられましたが、お二人にとって何か環境や心境の変化はございましたか?

亘様:プライベートに割ける時間が増えました。経営者の間は忙しくてできなかったことを今後はしてみたいですね。例えば、山菜取りなどゆっくり楽しみたいかな。あとは、今まで色々とサポートしてくれた家族のために美味しい料理を作ってあげたいと思っています。

現在は宋様達を支援する裏方という形で引き続き旅館営業をサポートすることで、充実した日々を過ごせていると思います。

宋様:当初は覚えることが多くて大変でしたが、だいぶ慣れてきました。

譲渡後の新たな取り組みとして、平日稼働を開始しました(従前は基本的に週末稼働のみ)。山荘わたりの魅力の一つである料理については、週末は亘さんに対応いただいていますが、平日の料理は亘さんに教えていただきながら、私達が担当しています。また、入浴施設も段々開放し、今は平日も温泉を楽しめる体制にしています。

他には、海外の旅行予約サイトへの掲載も開始しました。掲載後数カ月しか経っていませんが、若者や海外の宿泊者が増えているため、手応えを感じています。

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※写真右は宋様と一緒に旅館運営に携わっている劉安琪(リュウ アンキ)様

―今回のM&Aにおいて、弊社のサポート体制はいかがでしたか?

亘様:分からないことが多すぎて、M&Aはしたいけれどもどうやったらいいのか分からなかったのですが、菅沼さんは密に連絡を取ってくれて、イチからM&Aのことを教えてくれて感謝しています。M&Aのことを相談できる先が無かったから、非常に助かりました。

宋様:菅沼さんはコミュニケーションが取りやすかったです。自分にとって初めてのM&Aであったため、M&Aの知識はもちろん契約書作成や登記等多くの支援をいただきました。また、菅沼さん以外にも会計や労務の担当者に支援をいただき、成迫会計グループの多くの方に協力をしていただいたと感じています。

亘さんの意思を承継し、地域の活性化に取り組んでいく

―宋様、最後になりますが、今後の事業構想をお聞かせください

宋様:旅館だけでなく、多くのアウトドア体験(トレッキング、キャンプ、スキー等)が出来るという奈川地区の魅力をSNS等を使って発信していきたいです。また、現在、インバウンド向けの事業構想として、私の出身地である中国の旅行会社とツアーを企画しています。山荘わたりの良さ、奈川地区の良さをアピールし、多くの方に来ていただくことで、奈川地区の地域活性化に貢献していきたいです!

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